フェイデンハウス物語 第一話三章

3.カエルたちの変異

フェイデンハウスの庭園にある池は、長い間静寂に包まれていた。しかしある夜、その静寂が不穏な気配に変わり始めた。池に集まるカエルたちの様子が普段とは異なり、月光に照らされた水面に浮かぶ彼らの姿が次第に奇妙な変化を見せ始めたのだ。カエルたちの目はいつもより大きく輝き、その身体は不自然に伸び、異形へと変わりつつあった。

その中でも、一匹のカエルが特に異様な変化を遂げていた。他のカエルたちが焦るように池の中で動き回る中、そのカエルだけは落ち着いて変化を受け入れていた。彼の目は穏やかで、まるで深い眠りから覚めたばかりのような、眠たげな輝きを放っていた。

やがて、そのカエルはゆっくりと池から体を引き上げた。水面を揺らしながら、まるで時間を惜しむかのように慎重に動き、ついに二足で立ち上がった。薄い紫色のシャツを着ているかのように見えたその姿は、実はシャツではなく、彼の腹部に刻まれた奇妙な模様だった。

カエルは深く息を吸い込み、しばらくの間、静かに周囲を見渡した。その動きは、長年そこに立っていたかのように自然でありながらも、どこか微笑ましくも不気味な雰囲気を漂わせていた。そしてその夜、池の静寂を破り、変異を遂げたカエルは新たな世界に向けて一歩を踏み出したのだった。

コメント