フェイデンハウス物語 第一話六章

6.届かない声

カエル女が館に来て以来、彼女は毎日黙々と掃除を続けていた。埃にまみれ、荒れ果てた館が、少しずつそのかつての輝きを取り戻していくのを見て、私は久しぶりに誰かに何かをしてもらう喜びを感じていた。彼女の手際の良さと、献身的に働く姿勢は、私にとって新鮮であり、同時に懐かしい感情を呼び覚ますものだった。

 一方で、カエル男はのんびりと過ごしていた。彼は館の隅でリラックスし、たまに湧いてくる虫を食べては、満足そうにしている。彼には館をきれいにする義務などないが、彼女が一生懸命に働く姿を見て、何とはなしにネクタイを締めてみたりする。もしかすると、彼も何か手伝うべきかと思いつつも、彼なりのペースでこの館に馴染んでいるのだろう。

 そんな中、カエル女は広間の掃除を終えると、大きな古びた鏡の前に立った。鏡は長い間放置され、厚い埃で覆われて、何も映し出さないただの曇ったガラスと化していた。彼女はエプロンのポケットから布を取り出し、鏡を丁寧に拭き始めた。

 私は彼女がこの鏡に気づいてくれたことに、内心喜びを感じていた。この鏡を通じて、彼らにメッセージを送ることができるからだ。もし鏡が元の姿を取り戻せば、彼らに私の願いを伝えることができるかもしれない。頑固な汚れと戦うカエル女に、淡い期待を寄せた。

コメント