フェイデンハウス物語 第二話四章

第4章: 掃除道具入れの影

アオイが得体のしれない女性を連れて大広間に入ったちょうどその時、グロッグも同じような女性を連れて入ってきた。お互いに顔を見合わせ、驚きの表情が広がる。

「お前もか?」グロッグは目を丸くして言った。

「あんたも?何が起こってんのやろ?」アオイは不安を隠しきれずに返す。

その瞬間、他の部屋から「がたがたっ」という音が聞こえた。アオイとグロッグは顔を見合わせ、思わず身を乗り出した。「もしかして…?」

「確認しに行こうか。」グロッグが頷き、二人は音のする方へ向かうことにした。

恐る恐る音のする部屋のドアを開けると、どうやら掃除道具入れのようだった。薄暗い中にほうきやモップが整然と並んでいる。その中で、一つの影がバタバタと動いていた。

「なんだ、こいつ…!」とグロッグは驚いて声を上げた。よく見ると、ほうきを持った女性が、灰色がかった肌に目を見開き、どこか虚ろな表情で床を掃いている。目は大きく見開かれ、どこか一点を見つめているが、その焦点は定まっていないようだった。

彼女は無表情のまま、無心に掃き続けている。時折、ほうきを持つ手が震え、力が入らないのか、道具が床に落ちて「ガタン!」と音を立てる。そのたびに、彼女は驚くこともなく、またほうきで掃き始める。

アオイとグロッグは、その様子に目を丸くしながら立ち尽くした。彼女が空を見つめたまま箒を動かし続ける姿は異様で、まるで魂が抜けてしまったかのようだった。周囲に散らばる道具の音は、掃除道具入れの中で響き渡り、かえってその不気味さを際立たせていた。

「や、やめてや!危ないで!」アオイは思わず叫んだ。ゾンビは一瞬こちらを見つめたが、再び無心で掃除を続ける。彼女の視線には感情が欠けていて、ただ道具を持っているだけだった。

「とりあえず、こいつをお館様の鏡の前に連れて行こう。」グロッグが提案した。アオイも頷き、二人は掃除道具入れから女性を連れ出し、立ち尽くしている残りの二人の女性と共に、鏡の部屋へと向かうことに決めた。

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